榊原デンタルラボの理念とこだわり
企業理念
咬合を極める
歯科医療の進化・発展と歩調を合わせながら、時にはその原動力として大きな役割を担ってきたのが歯科技工所です。東京都目黒区の歯科技工所「榊原デンタルラボ」は1986年の創業以来、医療現場をサポートするだけでなく、高品質な義歯の製作を通じて多くの患者様のQOL改善に貢献してきました。その実績のバックボーンとなっているのが、咬み合わせは生体に調和するものでなくてはならない──という考え方。この考え方にもとづき、「咬合を極める」ことを主眼に置いた技術の向上に日夜取り組んでいます。
代表あいさつ
歯科技工士という仕事においては、咀嚼器官の役割とは何か、生体に調和した補綴物とは何かを考えながら補綴物の形態を決定することが重要になります。補綴物の製作には、正確なプレパレーション、正確な印象、正確なバイト、正確な模型製作、正確な咬合器への模型付着、正確な咬合器調整、そして正確な口腔内の情報が不可欠。しかしドクターサイドからは、どのようなデータを基本とし、どのような咬合を目指すべきか、またどのような誘導形態を与えたらよいかということに関して、明確な指針がないのが実情です。こうした条件下で私たちは、何を目標に補綴物を製作すべきなのでしょうか。
画像はシークエンシャルワックスアップです。
咬合再構築(咬合再構成)にとって重要なのは歯冠形態であり、嵌合時の下顎位維持のためのコンタクトの位置と運動時の側方ガイドとなりますが、これは犬歯ガイドだけの問題ではなく前歯部および臼歯部を含めた歯列全体のことを指します。これらを考慮することによって患者様の生体にしっかり調和し、チェアサイドでの咬合調整が少ない補綴物を作ることが可能になります。私たち榊原デンタルラボでは、少数歯の補綴物製作を通して咬合を考慮した咬合器への模型のトランスファー、咬合器の調整法、シングルクラウンのワックスアップを考えていき、歯科医院様とともにすべての患者様へ最適な補綴物をご提供してまいります。
榊原デンタルラボ 代表 榊原 功二
代表紹介
名前 | 榊原 功二 | |
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所属学会 | 日本顎咬合学会 国際先進学際歯科学会アジア部会 日本歯科技工学会 |
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経歴 | ||
1968年(昭和43年) | 愛歯技工専門学校卒業 同 技工専門学校助手として5年間勤務 |
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1974年(昭和49年) | 東京都日本橋 矢沢歯科医院入社 (元日本顎咬合学会長、矢沢一浩先生に従事) |
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1986年(昭和61年) | 矢沢歯科医院 退社 東京都目黒区にて榊原デンタルラボ開業 |
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1994年(平成6年) | オーストリア、ウィーン大学留学(短期) | |
1997年(平成9年) | ウィーン大学公認指導技工士 | |
2001年(平成13年) | 日本技工士会認定講師 | |
2005年~2010年(平成17年~平成22年) | 明倫短期大学技工科臨床教授 | |
2007年(平成19年) | 国際先進学際歯科学会員 | |
2012年(平成24年) | 日本顎咬合学会理事 | |
2013年(平成25年) | 日本顎咬合学会歯科技工士部会 筆頭副部長 | |
2015年(平成27年) | 日本顎咬合学会常任理事 日本顎咬合学会歯科技工士部会部長 現在に至る |
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参考文献 | ||
概念および理論 | クインテッセンス2001年3月号 「ヨーロピアン・ナソロジーの概念を知る」 |
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QDT 2000年10月号 「咬合再構成症例における臨床で使える咬合採得」 |
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顎咬合学会誌 かみあわせの科学 2000年第20巻3号 「顎関節と咬合その不可解な関係」 |
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歯科技工 平成9年2~4月号 シリーズ 生体に調和した咬合の再構成をめざして 「第2回 オーストリアにおける咬合学の概念」 「第3,4回 ナソロジーの新しい潮流」 |
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日本歯科評論 1997年 臨時増刊 ブラキシズムの基礎と臨床 「機能的咬合再構成からみたブラキシズムの意義」 |
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クインテッセンス出版 2007年「臨床家のための歯科補綴学」 | ||
クインテッセンス出版 2009年「咬合に強くなる本」 上・下巻 | ||
クインテッセンス出版 2009年「ブラキシズムの臨床 ~その発生要因と臨床的対応」 | ||
QDT 2012 Special対談「咬合接触点の理想と現実」普光江洋/榊原功二 | ||
【ワックスアップの方法】 | 日本歯技 平成11年11月 「順次誘導咬合のワックス・アップ」 |
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歯科技工 平成9年5月 シリーズ 生体に調和した咬合の再構成をめざして 「第5回 機能咬合構築のためのワックスアップ」 |
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QDT 2002年10月号 「シークエンシャル咬合の概念とワックスアップ」 |
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歯科技工18年6・9・12月 平成特別講座「順次誘導咬合で ”咬合調整ゼロ“ を 目指すクラウン・ブリッジ技工 |
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【臨床】 | 歯科医療 1999年秋号 特集 不正咬合の発現機序とその診断、治療 「6.骨格形態および機能咬合を考慮した義歯の制作」 |
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歯科技工 平成9年3,4,6月号 シリーズ 生体に調和した咬合の再構成を めざして 「第3,4回 ナソロジーの新しい潮流」 「第6回 Case Presentation」 |
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日本顎咬合学会誌 平成7年 第16巻第1号 「顎口腔系総合診断システムを用いたダイナミックな咬合診断とその治療」 |
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日本顎咬合学会誌 平成6年 第15巻第4号 「顎関節機能不全を伴う症例の下顎位の診断とその治療」 |
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クインテッセンス 2003年5月号〜2004年4月号 シリーズ 易しい咬合学 「シークエンシャル咬合の理論と実際」 |
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QDT 2004年6月号 シークエンシャルオクルージョンの臨床 「下顎の後退を伴うⅡ級症例の咬合治療の実際」 |
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日本顎咬合学会 平成18年Vol,26 No,1・2 「無調整なクラウンと咬合」 |
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クインテッセンス出版 2014年 「これで見える!つながる!咬合治療ナビゲーション 生態と調和する根拠ある咬合治療の実践」 |
代表の主な著書
これで見える!つながる!咬合治療ナビゲーション 著者: [著] 普光江洋 [著] 武井順治 [著] 榊原功二 |
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ブラキシズムの臨床 著者: [著] 佐藤貞雄 [著] 玉置勝司 [著] 榊原功二 |
関連書籍
咬合治療 失敗回避のためのポイント38 著者: [監著] 普光江 洋 [著] 武井順治 [著] 清水真一郎 臨床例の症例写真を提供しました。 |
インタビュー
「歯科技工」に対する信念とこだわり
技工物が審美的に優れていることはもちろん、下顎運動に調和した補綴物を作り上げることが重要だと私は考えています。それには、「下顎運動とは何か」をしっかりと理解しなければなりません。確かに形態の模倣も大事ですが、たとえば、上の歯と下の歯を重ね合わせた部分だけに着目しても、口腔全体を考えなければ正解は見えてきません。では、咀嚼器官というくくりで捉えたらよいのかといえば、実はそれだけでもないというのが「咬合」の考え方なのです。
すると、そもそも「咀嚼器官とは何なのか」というところから勉強しなくてはなりません。そうなると話はどんどん複雑になってしまいますが、私は下顎運動という大枠で捉えればいいと考えています。ともすれば、技工士の仕事は「審美性の追求」という目的に単純化されがちですが、咬合という側面から見ると実に奥行きのある探求分野なのです。実際の仕事では技術的な話が中心になりますが、これから技工の専門家として腕を磨きたい方には、咬合や下顎運動の理論・メカニズムを身につけてほしいと思っています。
現在の歯科業界について思うこと
今は歯科技工士の絶対数が少ないと思います。たとえば毎年約1,000人の高校生が技工士学校へ進学していますが、卒業からの5年間で仕事として歯科医療に携わっているのはそのうちの2割程度だそうです。国内に技工士の学校は20ほどありますが、1校あたりの学生数が20人程度というのですから、心細いですよね。仮により高いレベルの歯科医療を目指そうとするなら、卒業してからさらに別のコースで学ばなければなりません。技工士を取り巻く環境は、非常に厳しいものがあります。
私は、こうした現状を変えたい。それにはまず補綴物の革新から始めるべきだと考えています。たとえば、セットに時間がかからないもの補綴物を開発する。人工歯1本で30分や40分も調整にかかるようでは1日に対応できる患者様の数が限られますが、そこをできるだけ時短化することで技工士の負担も減り、収入面も改善できます。空いた時間を活用すれば、今以上に勉強することだって可能になるでしょう。
「自動化の流れ」への疑問
セレックや3Dプリンターなど技術革新はだいぶ進んでいますが、現在のコンピュータでは人間の繊細な感覚に追いついていない面も多々あると思います。たとえデータをもとに模型を作って咬合を忠実に再現しようとしても、実際には型の通りにいくことはなかなかありません。大まかなところまで機械まかせにし、最終的な細かい仕上げは技工士に――という先生もいらっしゃいますが、それでもまったく違和感のないものが作れるのかどうかというと、私は疑問に思っています。
今後の見通し
歯科技工士の理想は、優れた技術を駆使してリアルな咬み心地を再現できるような、極めて品質の高い補綴物を作ることにほかなりません。しかし、実際には技工物にも「市場」というものがあり、都心の一等地に店舗を構えるブティックのようなところで最高のものを買い求める層もあれば、下町のスーパーマーケットのようなところで普及品を安く、かつ早く手に入れたいと考える先生もいらっしゃいます。大多数は後者で、私たちがどれだけ歯科技工にこだわったとしても、そこまではなかなか評価してもらえないのが現状です。
ですから、今後は私たちの仕事の重要性、つまり「咬合の大切さ」についてもっと広く知ってもらえるような取り組みが重要になってくるでしょう。当然のことですが、私たちが作るものの価値を理解していただき、その金額の根拠となる技術や手間といった部分にも光が当たるよう努力していくべきだと思います。もちろん、技工所にも「サービス業」という側面がありますから、価格面での柔軟性や緊急対応など、取引先であるクリニックや歯科医院にとって「品質プラスアルファのメリット」を感じていただけるようなアピールも必要になるでしょう。
しかし、「咬合を極めること」が私たちの理想であることに変わりはありません。模倣で1本の歯のようなものは作れても、生体に調和した咬合を極めなければ、質の高いクラウンはできないのですから。